POV-Rayとは「Persistence of Vision Ray Tracer」という3DCG作成ソフトの略で、一般的に海外では「ぴーおーう゛ぃー・れい」、日本では「ぽぶ・れい」と呼ばれています。
一般の3DCG作成ソフトの多くは、物体の形状を作るモデラー、作った物体を空間に配置してカメラや照明の設定を行うシーンビルダー、最終的な画像やムービーを作るレンダラーが1つになっていますが、POV-Rayはその中のレンダラーにあたるソフトです。
POV-Rayでは、いくつかある3DCG生成法のうち、レイトレーシング法、ラジオシティ法を使っています。
レイトレーシング法は、ライトから発せられた光の道すじを追い、物体に当たって反射しながら、最終的に視点に飛び込んできた光を元に画像を生成する、というものです。仕組みは人間の目やカメラと基本的に同様なので、時間は掛かりますが非常にリアルな画像を作ることができます。
ラジオシティ法はさらに物体に当たった光が四方に拡散することを計算する方法で、膨大な時間と引き替えにレイトレーシング法以上に美しい画像を生成できます。
POV-Ray以外にも3DCGソフトウェアには、積み木やプラモデルのように物体を組み立てることができる簡単なものから、テレビCMやゲームの複雑で美しいCGを生成できるようなプロ用のものまで、数多くのものがあります。
しかし、それらのほとんどは有料どころか非常に高額で、また強力なマシンスペックを要求します。そのため3DCGがどんなものか試してみたいと思っても、個人にとっては敷居が高いというのが現状です。
一方POV-Rayは、POV-Ray Teamと呼ばれる世界中のプログラマー有志が制作しているフリーウェアで、誰でもインターネット経由でダウンロードすることができます。
さらにPOV-Rayは、高機能ながらマシンスペックをほとんど要求しません。それは、一般の3DCGソフトがマウスなどによってリアルタイムに物体を操作するのに対して、POV-Rayではシーン記述言語と呼ばれる、C言語のような命令文(スクリプト)を用いて物体を操作するからです。
最終的に3DCGを生成(レンダリング)するときも、それぞれのコンピュータに応じたスピードで描画されるので、文章を書けるコンピュータがあればPOV-Rayを使用することができると言えます。
POV-Rayは、スクリプトを用いて記述するという特性から、趣味・実用の目的だけでなく、学術分野での利用も盛んです。これは、自然現象の測定結果や、コンピュータで計算した予測データなどを、数値データとして簡単にPOV-Rayに取り込むことができるからです。理工系大学や専門学校でもPOV-Rayを使った3DCGの授業を開講しているところがあります。
POV-Rayを使う利点
1.無料で利用できる
2.使い方によってはプロ並みの画像や映像が作れる
3.学術目的への利用、データの視覚化に強い
弱点
1.物体の作成(モデリング)や配置(シーンビルド)にスクリプトを用いるので直感的でない
2.日本語版がない、日本語の書籍やWebサイトが少ない
3.人間や生き物を動かすのには不向き(逆に自然現象などには強い)
直感的でないと言われていますが、3DCGに必要なことを1つ1つ手書きで作っていくので、3DCGの原理をよく理解できるのではないかと思います。